末期の肺がんだった父が、ある日、「みんなで墓参りに行こう」と言った。
家族で車に乗って墓地へ向かった。
墓地に着くと、父はこう言った。
「わし、歩くんしんどいから、車から見てるわ」
俺らが墓参りをしている姿が見える場所に車を止め、父は車の中から、じっとこっちを見ていた。

あんなことは、初めてやった。
あのときは、歩くのがしんどいんやな、としか思っていなかった。
でも、今になって思う。
父はあのとき、自分が亡くなったあと、俺ら家族に墓参りしてもらっている未来を見ようとしていたんやろな。
今でも墓参りに行くと、あの日、父が乗った車を止めた場所に自然と目が向く。
そこから今も父がこっちを見ているような気がして、俺は思わずニコッと笑ってしまう。
※この画像は、当時の記憶をもとにAIで再構成したイメージです。実際の写真ではありません。